特別展 国宝 聖林寺十一面観音 三輪山信仰のみほとけ in 東京国立博物館 見学日記

東京国立博物館(トーハク)で2021年6月22日(火)から9月12日(日)まで開催されている、特別展「国宝 聖林寺十一面観音―三輪山信仰のみほとけ」を見学しました。

見学したいと思ったきっかけ

今回この特別展を見学したいと思ったきっかけは、一冊の本との出会いでした。その本とは、ちくま新書 「廃仏毀釈-寺院・仏像破壊の真実(畑中章宏著 )」です。この本では、歴史の授業で学ばなかった「廃仏毀釈」と「神仏習合廃」について分かりやすく書かれていました。この「知」の感動や興奮冷めやらぬ中、本の中で紹介されていた「聖林寺十一面観音菩薩立像」を東京で見ることができる…「特別展 国宝 聖林寺十一面観音 三輪山信仰のみほとけ」が開催されていると知って、入場チケットを予約しました。

廃仏毀釈とは

廃仏毀釈とは、慶応四年から明治元年までに相次いで出された布告や通達(これらの総称を神仏分離令と言う)によって、それまで1000年近く共存状態にあった神社仏閣から仏教色の排除・破壊が行われたことを指します。

特別展 国宝 聖林寺十一面観音 三輪山信仰のみほとけ

私は「廃仏毀釈-寺院・仏像破壊の真実」を読んで、「廃仏毀釈」の原因には、明治維新まで積み重なった政治的或いは宗教的な軋轢や憎悪があると考えました。それは、戊辰戦争の後に会津藩に対して明治政府が行った戦後処理を調べてゆくなかでも感じた「教科書が教えない明治維新の一端」、華々しさの裏にある闇を見たような気がしました。それはずっと現在にも続く、日本を分断する闇だと感じました。

「特別展 国宝 聖林寺十一面観音 三輪山信仰のみほとけ」を見学

予約したのは、2021年8月27日(金)14時から見学の回。少し早めにトーハクに到着しました。「特別展 国宝 聖林寺十一面観音 三輪山信仰のみほとけ」は、本館の特別5室で開催。同じ回に見学される人の入場待機列ができていて、係りの方の誘導に従いその最後尾に並びました。

東京国立博物館

十一面観音菩薩立像

室内正面奥で三ツ鳥居のレプリカを背に立ち姿を見せる「十一面観音菩薩立像」。木心乾漆造(もくしんかんしつづくり)その高さ(像高約2メートル)に驚きました。台座を含めると、成人男性の身長くらいあるのかな。頭上の化仏のうち三体は、廃仏毀釈の際に失われたのでしょうか。細めた目から感じる視線は凛として厳しく感じられました。そして、人差し指を地面に向けて、何か握ろうとしているようにも、また幼稚な発想でいえば指鉄砲を作るようにも見える右手。一方、左手に持っているのは花瓶でしょうかね。

特別展 国宝 聖林寺十一面観音 三輪山信仰のみほとけ

トーハクの東洋館に展示されている「十一面観音菩薩立像」や「浮彫十一面観音龕(陝西省西安宝慶寺)」と見比べると、他にも色々な特長が見えてきそうです。

地蔵菩薩立像

現在は法隆寺にある地蔵菩薩立像。像高は約1.7メートルあり、丸みを帯びてふっくらとした印象のお顔立ちに心が和む思いがしました。

日光菩薩立像と月光菩薩立像

ふたつの菩薩像は同じように見えますが、よく見比べると違いが分かってきました。まずは頭にのせている帽子のような被り物の形や顔立ち。正面から見た後にサイドに回って横顔を観察すると、その違いは一目瞭然。月光菩薩立像のスッと高くスマートなお鼻と、日光菩薩立像のやや低く可愛らしいお鼻。またウエストラインや腹筋の辺りにも違いが見て取れます。像を観察する際は、作者がどのようなお姿をイメージしたのか、誰かモデルがいるのではないかな…と想像を膨らませてみては。きっと何倍も見学が楽しくなると思います。

見学を終えて

「廃仏毀釈-寺院・仏像破壊の真実」を読んでからずっと気になっていたので、実物を観て色々感じることができました。

特別展 国宝 聖林寺十一面観音 三輪山信仰のみほとけ

あの重そうな十一面観音菩薩立像をどうやって聖林寺まで運びこんだのか。白い布か黄色い布を全体に巻き付けて、台車に乗せて人力で運んでいく光景…を想像しました。

東京国立博物館の見学に便利なサイト

○東京国立博物館公式ホームページ https://www.tnm.jp/

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