鶴岡市立加茂水族館内にあるレストラン「魚匠(ぎょしょう)ダイニング沖海月(おきみづき)」で2月13日から「船頭北前御前(北前船船頭御膳)」が提供されるのを前に、1月29日に開催された試食会に参加してきました。
Table of Contents
船頭北前御前
船頭北前御前は、飽海地域史研究会(酒田市、小野寺雅昭会長)と魚匠ダイニング 沖海月の須田剛史料理長が考案。
小野寺会長のお話によると、文化5年(1808年)4月4日に蝦夷地との交易を活発にしようして、本間家四代光道によって本間船日吉丸が新造された際に、本間家一族や船大工、来賓の町役人、船頭、水主に振舞われた御膳を今回再現されたそうです。
酒田船頭北前船料理(3,330円)は2月13日から通年で提供されますが、予約が必要です。問い合わせは沖海月「0235(64)8356」までご連絡ください。
そば文化を知る
須田料理長は料理を考案するにあたって、まず北前船で西日本から伝来した「むきそば」から調査を始められたそうです。東北では「むきそば」ですが、信州では「そばのみ」、北陸や徳島では「そば米」と呼ばれています。
当初そばは粥として食べられ、鎌倉時代以降から団子やそばがき、すいとん、煎餅としてそば粉を使った料理が加わりました。長野県木曽郡大桑村にある定勝寺の文献に「蕎麦切り」の記載があり、これがそばを「切って食べた」最古の記録になるのだそうです。また庄内では、出羽三山を訪れた松尾芭蕉が羽黒山の蕎麦切りをもてなされたと曾良旅日記に記されています。
永平寺釜揚げ蕎麦
須田料理長から「まずは温かいうちにお召し上がりください。」と声をかけていただいたので、最初は「永平寺釜揚げ蕎麦」から。
そばの上に大根おろしや刻みネギをのせた後、温かい汁をかけていただきました。
蕎麦(酒田むき蕎麦)
殻を取ったそばの実をを茹でたものに出汁をかける「むきそば」私は庄内に移住してから初めて食べました。
蕎麦粥
梅干しがのった「そば粥」
おかゆとは言ってもドロドロではなく、柔らかく炊かれたご飯のような感じ。
鱈・鯛などの食文化
須田シェフによると、北海道(蝦夷地)から北前船で日本海を下って敦賀を経て京都へもたらせたといわれる棒鱈は、江戸時代には縁起物として珍重され、「本朝食鑑(ほんちょうしょっかん)」では三越(越前・越中・越後)で獲れていることが紹介されているとのこと。また徳川家や朝廷に献上され、庄内藩でも酒井家が正月3日に庄内鯛と塩鱈を献上したことが「寛政武鑑」に記載されているそうです。
お刺身
お刺身の皿には、真鯛の差身とカラスミ、茹で海老がのっています。
沖海月で製造されたカラスミはお土産用に販売されているとのこと。
寒鱈汁
庄内の冬の味覚「寒ダラ」を使った寒鱈汁(どんがら汁)。
寒ダラは小寒から立春に取れる真鱈のことで、この時期は身が引き締まって脂の乗りが良いといわれています。身はもちろんアラや白子(庄内ではだだみと呼ばれている)など余すことなく使われ、岩海苔と葱が風味に変化とキレを加えてくれるように感じました。
椀物
椀物には鰊や厚揚の他、 茄子や菜の花、孟宗、針生姜などが使われています。
胡麻豆腐
精進料理のひとつである胡麻豆腐。
空海(弘法大師)が中国から胡麻を持ち帰って日本で栽培を始め、高野山が胡麻豆腐の発祥といわれています。おろし生姜が添えられ、餡がかけられています。
お品書き
庄内米の鰊粥漬け
鱒の紅花押寿司
蕎麦(酒田むき蕎麦)
黒豆松葉 南禅田楽
平目の膾指身 生湯葉 幾ら 花穂
真鯛の差身
寒鱈汁 岩海苔 葱
鰊 厚揚 茄子 菜の花 孟宗 針生姜
鱈醤油焼き
玉子焼き
酢取茗荷
蕎麦粥
抹茶をいただきながら
酒田船頭北前船料理には抹茶・お菓子がセットになっています。今回は須田料理長が直々にお茶を点てていただきました。
見事なお点前だと思っていましたところ、須田料理長は酒田で裏千家の先生に茶道を習っていらっしゃるとのこと。抹茶をいただき和やかな雰囲気になったところで、須田料理長からお話を伺うことができました。
須田料理長は宮城県仙台市のご出身。奥様が酒田市のご出身ということもあり、現在は酒田市に在住。当初は日本海沿いに金沢まで調理の修行をする予定だったそうですが、庄内の地に留まり、ここを拠点に活動されることになったとのこと。
魚匠ダイニング 沖海月の基本情報
魚匠ダイニング 沖海月
住所:山形県鶴岡市今泉大久保657−1 鶴岡市立加茂水族館内
https://kamo-kurage.jp/restaurant/